我是猫片段(朗诵)
初三 散文 1792字 136人浏览 北京产经新闻报

吾わが輩はいの家の裏うらに十坪つぼばかりの茶園ちゃえんがある。広くはないが瀟洒さっぱりとした心持ち好く日の当あたる所だ。うちの子供があまり騒ぞめいで楽らく々らく昼ひる寝ねの出来ない時や、あまり退たい屈くつで腹はら加か減げんのよくない折おりなど

は、吾輩はいつでもここへ出て浩然こうぜんの気を養やしなうのが例である。ある小

こ春はるの穏おだやかな日の二時頃であったが、吾輩は昼飯後ちゅうはんご 快こころよく一いっ睡すいした後のち、運動かたがたこの茶園へと歩ほを運はこばした。茶の木の根ねを

一本一本嗅かぎながら、西側の杉すぎ垣がきのそばまでくると、枯菊を押し倒してそ

の上に大きな猫が前ぜん後ご不ふ覚かくに寝ている。彼は吾輩の近づくのも一向いっこう心

付づかざるごとく、また心付くも無む頓とん着ちゃくなるごとく、大きな鼾いびきをして 長なが々ながと体を横よこたえて眠っている。他ひとの庭内に忍び入りたるものがかく

まで平気に睡ねむられるものかと、吾輩は窃ひそかにその大胆なる度胸に驚かざる

を得なかった。彼は純粋の黒猫である。わずかに午ごを過ぎたる太陽は、透明な

る光線を彼の皮膚の上に抛なげかけて、きらきらする柔毛にこげの間より眼に見えぬ

炎でも燃もえ出いずるように思われた。彼は猫中の大王とも云うべきほどの偉大なる体格を有している。吾輩の倍はたしかにある。吾輩は嘆賞の念と、好奇の心

に前後を忘れて彼の前に佇立ちょりつして余念もなく眺ながめていると、静かなる小

春の風が、杉垣の上から出たる梧桐ごとうの枝を軽かろく誘ってばらばらと二三枚の

葉が枯菊の茂みに落ちた。大王はかっとその真丸まんまるの眼を開いた。今でも記

憶している。その眼は人間の珍重する琥珀こはくというものよりも遥はるかに美しく

輝いていた。彼は身動きもしない。双眸そうぼうの奥から射るごとき光を吾輩の

矮小わいしょうなる額ひたいの上にあつめて、御めえは一体何だと云った。大王にし

ては少々言葉が卑いやしいと思ったが何しろその声の底に犬をも挫ひしぐべき力

が籠こもっているので吾輩は少なからず恐れを抱いだいた。しかし挨拶あいさつをしないと険呑けんのんだと思ったから「吾輩は猫である。名前はまだない」となるべく平気を装よそおって冷然と答えた。しかしこの時吾輩の心臓はたしかに平時より

も烈しく鼓動しておった。彼は大おおいに軽蔑けいべつせる調子で「何、猫だ? 猫

が聞いてあきれらあ。全ぜんてえどこに住んでるんだ」随分傍若無人ぼうじゃくぶじんで

ある。「吾輩はここの教師の家うちにいるのだ」「どうせそんな事だろうと思っ

た。いやに瘠やせてるじゃねえか」と大王だけに気焔きえんを吹きかける。言葉付か

ら察するとどうも良家の猫とも思われない。しかしその膏切あぶらぎって肥満して

いるところを見ると御馳走を食ってるらしい、豊かに暮しているらしい。吾輩

は「そう云う君は一体誰だい」と聞かざるを得なかった。「己おれあ車屋の黒

くろよ」昂然こうぜんたるものだ。車屋の黒はこの近辺で知らぬ者なき乱暴猫である。しかし車屋だけに強いばかりでちっとも教育がないからあまり誰も交際しな

い。同盟敬遠主義の的まとになっている奴だ。吾輩は彼の名を聞いて少々尻こそ

ばゆき感じを起すと同時に、一方では少々軽侮けいぶの念も生じたのである。吾輩

はまず彼がどのくらい無学であるかを試ためしてみようと思って左さの問答をし

て見た。

「一体車屋と教師とはどっちがえらいだろう」

「車屋の方が強いに極きまっていらあな。御めえのうちの主人を見ねえ、まるで

骨と皮ばかりだぜ」

「君も車屋の猫だけに大分だいぶ強そうだ。車屋にいると御馳走ごちそうが食えると見え

るね」

「何なあにおれなんざ、どこの国へ行ったって食い物に不自由はしねえつもりだ。

御めえなんかも茶畠ちゃばたけばかりぐるぐる廻っていねえで、ちっと己おれの後

あとへくっ付いて来て見ねえ。一と月とたたねえうちに見違えるように太れるぜ」

「追ってそう願う事にしよう。しかし家うちは教師の方が車屋より大きいのに住

んでいるように思われる」

「箆棒べらぼうめ、うちなんかいくら大きくたって腹の足たしになるもんか」

彼は大おおいに肝癪かんしゃくに障さわった様子で、寒竹かんちくをそいだような耳をし

きりとぴく付かせてあららかに立ち去った。吾輩が車屋の黒と知己ちきになったの

はこれからである。